【ジャズ理論考察】マイナー・キーのファンクションとモードの境界線

【ジャズ理論考察】マイナー・キーのファンクションとモードの境界線

こんにちは、枡田咲子です。

前回は、マイナー・キーにおける♭VII (トライアド)の場合のファンクションについて考察しました。

今回は、最近よくみかける『ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードだけで作ったコード進行』のファンクションについて考察します。

ナチュラル・マイナーのみは一見簡単そうですが、実は解釈すると難しく少し踏み込んだ内容になります。

  • マイナー・キーなのか?モードなのか?
  • コード進行例

以上を考察していきます。これまで同様、私個人の解釈ではありますが、ご参考になれば幸いです。

※本稿では、基本的なジャズ音楽理論やジャズ・ハーモニー(コード進行)を一通り学んだ方、またはジャズ音楽の教育に興味がある方向けの内容です。理論上の定義にこだわるというより、実際の楽曲でどのように聴こえ、どのように使われているかをもとに考察しています。ご興味ある方はご一読ください。

マイナー・キーなのか?モードなのか?

『ナチュラル・マイナー・スケールから構成されるダイアトニック・コードのみを使う』ということは、

  • マイナー・キーなのか?
  • エオリアン・モードなのか?

と、2通りの解釈ができます。

まず、ナチュラル・マイナー・スケールとエオリアン・スケールの構成音自体は同じです。しかし、理論の観点では使い方が異なります。

ナチュラル・マイナー・スケールはマイナー・キーで使用されるもので、基本的には、ハーモニック・マイナー・スケールとメロディック・マイナー・スケールと併せて使用されるものです。

マイナー・キーでのダイアトニック・コードはファンクショナル・コードとして扱われるためファンクションという概念でコード進行を分析することができます。

一方、エオリアン・スケールはモードとして使用されるものです。モードの場合、特徴音を重視するため、そのダイアトニック・コードはファンクショナル・コードとして扱う必要はありません。

つまり、『ナチュラル・マイナー・スケールから構成されるダイアトニック・コードのみを使ったコード進行』は、エオリアン・モードとしての発想が強いと言えるのではないでしょうか。

まずはそのコード進行のトニック(主音)が何でキー(メジャー、マイナー、モード)が何なのかが重要だと考えます。

最近では、ジャンルの多様化もあり、様々なコード進行があり、キーを特定しづらいものあります。わざと曖昧にするケースもあります。何が正解なのか、答えに固執せず、様々な可能性を考えられるようになると新たな発見につながり面白いものです。

コード進行例

ここでは、実際のコード進行でみていきましょう。

【コード進行例1:マイナー・キー】

この進行では、明確にサブドミナント・マイナー、ドミナント、トニックという流れから、マイナー・キーの印象が強いです。 Gm7(Vm7)はG7(V7)を簡略化した形と考え、ドミナント・モーションしていることからもマイナー・キーに聴こえてきます。

【コード進行例2:エオリアン・モード】

この進行ではドミナント・モーションがありません。

エオリアン・モードの特徴音♭6 (♭VImaj7と♭VII7に含まれる)に加え、2小節をリピートすることから、エオリアン・モードの響きに聴こえてきます。

【コード進行例3:マイナー・キー + エオリアン・モード】

このようなケースでは、前半は浮遊感のあるエオリアン・モードに聴こえますが、後半のGm7→Cm7 のドミナント・モーションしていることからマイナー・キーに聴こえます。

私は、以下のようにアナライズ(分析)します。

マイナー・キーでもエオリアン・モードでも、Im7は、トニック・マイナーと考えることができます。

前半はエオリアン・モードと分析し、後半Gm7(ドミナント)→Cm7 (トニック・マイナー)とマイナー・キーとして分析することができます。

エオリアン・モードでは、ファンクショナル・コードとは捉えないためファンクションは表記しません。

IVm7は、サブドミナント・マイナーと表記していますが、ここまでモードと解釈する場合、ファンクションの表記はどちらでもよいかもしれません。

まとめ

ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードだけで作ったコード進行は、理論として分析する場合は、解釈は主に2通りあり、

  • マイナー・キーとして捉えるのか
  • エオリアン・モードとして捉えるのか

に分かれます。

実際、ナチュラル・マイナー(エオリアン)のダイアトニック・コードだけの進行は作りやすいので、キーがどうであるとか、ファンクションがどうであるとか深く考えず、音を聴きながらいろいろ試してみると楽しいです。

マイナー・キーはメジャー・キーとは違い、理論上では少し複雑な構造になっています。ただコード進行のバリエーションは、メジャーよりシンプルな進行が多い印象です。

マイナー・キーのファンクションについてこれまで考察してきましたが、解釈は1つではないこともよくあります。どれが正解なのではなく、色々な考え方や見方ができるようになることが一番重要だと私は考えています。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

【筆者プロフィール】

  • バークリー音楽大学 ジャズ・コンポジション科卒業
    (同大学ハーモニー部門よりアレックス・ウラノウスキ・アワード受賞)
  • 国際ジャズ作曲コンペ優勝、音楽専門学校にて20年以上音楽理論教育に携わる
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