実はVm7ではない!メジャー・キーでのVm7について②

こんにちは、枡田咲子です。
前回まは、メジャー・キーにおけるVm7で、『モーダル・インターチェンジ・コードとしての解釈』ついて考察しました。
しかし実際は、コード進行によって Vm7のように見えて、実はVm7 ではないケースがあります。
ここでいうVm7とは、次の2つを指しています。
- メジャー・キーの場合:モーダル・インターチェンジ・コードとしてのVm7
- マイナー・キーの場合:ダイアトニック・コードとしてのVm7
今回は、 Vm7(モーダル・インターチェンジ・コード)のように見えて、実はそうではない場合ついて、
以下の観点から整理していきたいと思います。
- リレイティド IIm7としての解釈
- アプローチ・コードとしての解釈
それではみていきましょう!
※本稿では、基本的なジャズ音楽理論やジャズ・ハーモニー(コード進行)を一通り学んだ方、またはジャズ音楽の教育に興味がある方向けの内容です。理論上の定義にこだわるというより、実際の楽曲でどのように聴こえ、どのように使われているかをもとに考察しています。ご興味ある方はご一読ください。
リレイティド IIm7
次のコード進行をみてきましょう。

この進行では、Gm7は 一見 Vm7に見えますが、ここではVm7 ではなく『リレイティドIIm7』として扱います。
Gm7は、次のC7(セカンダリー・ドミナント、V7/IV)と II-V進行の関係にあります。
この場合、Vm7(モーダル・インターチェンジ・コード)ではなく、リレイティド IIm7 と考えるのが自然です。つまり、この Gm7 は『リレイティド IIm7として機能しているコード 』と捉えます。
(※ここでいうリレイティド IIm7は、ファンクションを指しています。)
この場合あえてディグリー・ネームを表記する必要はありません。『II-Vの関係にあるかどうか』が分析において重要なポイントです。
Tipコード進行をを学んでいくと、すべてのコードにディグリー・ネームを付けたくなるものですが、必ずしも付ける必要はないと覚えておくと、分析がスムーズになります。
アプローチ・コード
次の譜例をみてみましょう。

このコード進行でも、Gm7は 一見 Vm7に見えますが、ここでは Am7に向かうアプローチ・コードとして考えることができます。
アプローチ・コードとは、ターゲット・コード(この場合Am7)に近づく(アプローチする)ためのコードで、アレンジなどでは、コード自体表記しないこともあります。
この例では、メロディの関係からもダブル・クロマチック・アプローチと解釈でき、それをコード表記したものと考えられます。
それではファンクションやディグリー・ネームはどう考えるのか?
アプローチ・コードで重要なのは、『このコードがアプローチ・コードである』と理解していることです。アプローチ・コードは、ファンクショナル・コードではないので、ファンクションはありません。
ディグリー・ネームについては、あえてVm7 →#Vm7 と書くことはできますが、ここではモーダル・インター・チェンジコードとは別の扱いとして、この例では表記していません。
つまり、アプローチ・コードにディグリー・ネームは必須ではないと考えてよいでしょう。
【補足】アプローチ・コードにディグリー・ネームを表記すると、分析上、モーダル・インターチェンジ・コードとの区別が見分けにくくなることがあります。そのため、私は表記しなくてもいいかなと、と思っています。
まとめ
今回の記事では、メジャー・キーにおいて、一見V m7(モーダル・インターチェンジ)のように見えて、実はそうではないケースについての考察しました。
モーダル・インターチェンジ・コードかどうか判断するためには、コード進行の流れを見る必要があります。コード進行によっては、『リレイティドIIm7』や『アプローチ・コード』のときもあります。
コード進行を分析していると、どうしても全てのコードにファンクションやディグリー・ネームを付けたくなりますが、本来分析において重要なことは、そのコードがどのような役割を持っているのかということです。
シンプルに考えるなら、まずそのコードが、
- ダイアトニック・コード
- セカンダリー・ドミナント
- その他(モーダル・インターチェンジ・コード、リレイティドIIm7など)
この3つのどれに当てはまるかを見分けられるようになると、コードの役割が見えてくると思います。
(※『その他』に分類するコードについては、解釈や分析が立場によって異なる場合があります。)
次回は、ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードでもう1つ気になる『♭VII7のファンクションについて』考察してみたいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
【筆者プロフィール】
- バークリー音楽大学 ジャズ・コンポジション科卒業
- (同大学ハーモニー部門よりアレックス・ウラノウスキ・アワード受賞)
- 国際ジャズ作曲コンペ優勝、音楽専門学校にて20年以上音楽理論教育に携わる

