♭VII(トライアド )のファンクションについて【No.4】
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こんにちは、枡田咲子です。
前回は、マイナー・キーにおける♭VII7 が、IVm7とII-Vの関係になった場合のファンクションについて考察しました。
♭VII7 の基本のファンクションは、サブドミナント・マイナーでありながら、コード進行によってはドミナントの機能を持つこともあります。
今回はさらに踏み込んだ考察として、マイナー・キーにおいて、
- ♭VII (トライアド)のファンクションについて
- トライアド中心のコード進行例(マイナー・キー)
以上を考察していきます。これまで同様、私個人の解釈ではありますが、ご参考になれば幸いです。
※本稿では、基本的なジャズ音楽理論やジャズ・ハーモニー(コード進行)を一通り学んだ方、またはジャズ音楽の教育に興味がある方向けの内容です。理論上の定義にこだわるというより、実際の楽曲でどのように聴こえ、どのように使われているかをもとに考察しています。ご興味ある方はご一読ください。
♭VII ( トライアド)のファンクションについて
ダイアトニック・コードにおいて、トライアド(3和音)のファンクションは、セブンス・コード(4和音)と同じものと考えます。
つまり、トライアドになったからといって、ファンクションが変わることは基本的にはありません。
♭VII(トライアド)であっても、基本のファンクションはサブドミナント・マイナーと捉えます。
トライアドの場合、IVm のルートは含まれますが、m3rdの音が含まれていません。
しかし、ナチュラル・マイナーのダイアトニック音で構成されているのであれば、その延長線にm3rdは含まれると仮定し、サブドミナント・マイナーと考えることもできます。ただし、トライアドなので、♭VII 7とは聴こえ方は異なります。
トライアドは、セブンス・コードと比べて構成音が少ないため、機能(聴こえ方)が感じにくいことがあるかもしれません。しかし基本的には、ダイアトニック上の機能として、♭VIIは♭VII7と同様と考えて問題ないでしょう。
トライアド中心のコード進行例(マイナー・キー)
実際のコード進行でみていきましょう。
トライアド中心で作られたコード進行は、シンプルで聴きやすいという特徴があります。
【例1】トライアドのみのコード進行

基本のファンクションとして聴き取ることができます。
【例2】転回形が含まれるコード進行

Gm/Bbは、Gm(Vm)の転回形です。
ドミナント(第5音:G)が含まれることで、ドミナント的な響きとして聴きとることができます。
このように、転回形がコード進行に含まれる場合でも、基本的には元のコード・ファンクションが有効です。
ただし転回形では、ベース音が基本形と異なるため、響きは少し柔らかくなるような印象があります。
例えば、
- G(V)→ Cm(Im)
ドミナントからトニック・マイナーと強い解決感があります。
しかし、
- G(V)→ Cm/Eb(Im/♭3)
同じく、ドミナント→トニック・マイナーではありますが、解決感はそこまで強く感じられません。
このように、コード進行においては、ファンクションだけなく『ベースがどのように動くか』も極めて重要なポイントと言えます。
まとめ
♭VII (トライアド)の基本のファンクションは、セブンス・コード(4和音)の時と同様『サブドミナント・マイナー』と捉えることができます。
トライアドはシンプルなコードなので、基本的な考え方で問題ないと思います。
また♭VII は、ナチュラル・マイナーから構成される♭VII 7の『7thを省略したもの』と考えることもできます。
転回形を用いた場合は、ベース音ではなくコードのファンクションを考えます。
しかし、聴こえ方は基本形とは少し異なるため、実際は音を聴きながら確認することが大切です。
ヒントとして、トライアドに『もし7thを足すなら、どの音が相応しいか』を想像すると、そのファンクションが見てくることがあります。
トライアドには、『ファンクションが何であるのか?』という答えは一つではなく、トライアドだからこそ『曖昧に聴かせられる』という魅力があったりするものです。
次回は、『ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードだけで作ったコード進行』のファンクションについて考察してみたいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
【筆者プロフィール】
- バークリー音楽大学 ジャズ・コンポジション科卒業
(同大学ハーモニー部門よりアレックス・ウラノウスキ・アワード受賞) - 国際ジャズ作曲コンペ優勝、音楽専門学校にて20年以上音楽理論教育に携わる

