♭VII7 のファンクションは何なのか?【No.3】

こんにちは、枡田咲子です。
前回は、♭VII7 のその他のファンクションの可能性について、とくに♭VII7 がドミナント・レゾリューションした場合を中心に考察しました。
♭VII7 の基本のファンクションはサブドミナント・マイナーですが、次にどのコードに進行するかでドミナント的な機能を持つことがあります。
今回は、その♭VII7 が、IVm7とII-Vの関係になった場合、ファンクションはどのように考えられるのかについて、
- ♭VII7がドミナント・レゾリューションする場合
- ♭VII7がドミナント・レゾリューションしない場合
以上の2つのケースについて考察してみたいと思います。
これまで同様、私個人の解釈ではありますが、ご参考になれば幸いです。
※本稿では、基本的なジャズ音楽理論やジャズ・ハーモニー(コード進行)を一通り学んだ方、またはジャズ音楽の教育に興味がある方向けの内容です。理論上の定義にこだわるというより、実際の楽曲でどのように聴こえ、どのように使われているかをもとに考察しています。ご興味ある方はご一読ください。
♭VII7がドミナント・レゾリューションする場合
今回のコード進行でも前回と同様に、解釈は大きく分けて2通り考えることができます。
解釈1:ダイアトニック・コードとしての解釈
B♭7は、ダイアトニック・コード ♭VII7として分析します。

このときファンクションは、II-V を示す下カッコと、ドミナント・レゾリューションを示す矢印(アロー)から、ファンクションは以下のように捉えることができます。
- Fm7(IVm7):サブドミナント・マイナー、リレイティドIIm7(デュアル・ファンクション)
- B♭7(♭VII7):サブドミナント・マイナー + ドミナント的な機能(デュアル・ファンクション)
II-V進行ではありますが、サブドミナント・マイナーでの一貫の流れと捉えることができます。
しかし、IVm7とII-Vの関係になることで、♭IIImaj7へ進行する方向性がより明確になり、ドミナント的な機能を強く感じるようになります。
解釈2:セカンダリー・ドミナントとしての解釈
B♭7は、セカンダリー・ドミナントとして、V7/♭III として分析します。

このときファンクションは、
- Fm7(IVm7):サブドミナント・マイナー、リレイティドIIm7(デュアル・ファンクション)
- B♭7 (V7/♭III):セカンダリー・ドミナント
この捉え方では、II-V を示す下カッコとドミナント・レゾリューションを示す矢印(アロー)によって、B♭7を明確にドミナント機能を持つV7/♭III (セカンダリー・ドミナント)と解釈します。
B♭7 が、Fm7とII-V進行になることで、より明確にE♭maj7へ進行期待がより強まると考えられます。この場合、サブドミナント・マイナーの機能は感じられないと捉えることもできます。
♭VII7がドミナント・レゾリューションしない場合
例えば、IVm7 - ♭VII7とII-V進行になっているものの、♭VII7がドミナント・レゾリューションしなかった場合、そのファンクションはどのように考えることができるでしょうか。
ドミナント・レゾリューションしない例として、♭VImaj7に進行する場合を取り上げていますが、基本的にどのコードに進行する場合でも、考え方は同様で2通りの解釈ができます。
解釈1:ダイアトニック・コードとしての解釈
B♭7は、ダイアトニック・コード ♭VII7として分析します。

このときファンクションは、II-V を示す下カッコから、
- Fm7(IVm7):サブドミナント・マイナー、リレイティドIIm7(デュアル・ファンクション)
- B♭7(♭VII7):サブドミナント・マイナー + ドミナント的な機能(デュアル・ファンクション)
と捉えることができます。
B♭7(♭VII7)は、II-V進行ではありますが、サブドミナント・マイナーでの一貫の流れと捉えることができます。
そして、結果的にドミナント・レゾリューションしていませんが、II-V 進行の時点で、ドミナント・レゾリューションを予感させる響きを感じることができます。
そのため、ダイアトニック・コードとして本来もつサブドミナント・マイナーの機能に加え、ドミナント的な機能を持つデュアル・ファンクションとして捉えた考え方です。
【Tip】サブドミナント・マイナーの機能も持ち合わせることから、偽終止を表す( )の表記はどちらの解釈でも問題ないと考えられます。
ここで重要なのは、II-V進行を示す下カッコの表記、そしてその後にドミナント・レゾリューションを示す矢印がないことです。これらの表記から、進行上の機能的な流れを把握することができます。
解釈2:セカンダリー・ドミナントとしての解釈
B♭7は、セカンダリー・ドミナントとして、V7/♭III として分析します。

このとき、ファンクションは以下のように捉えることができます。
- Fm7(IVm7):サブドミナント・マイナー、リレイティドIIm7(デュアル・ファンクション)
- B♭7(V7/♭III) :セカンダリー・ドミナント
II-V 進行であるため、B♭7は♭IIImaj7への進行を強く予感させます。
そのため、サブドミナント・マイナーの機能は考慮せず、セカンダリー・ドミナントとして V7/♭III と分析することができます。
この場合は、ドミナントの機能を優先した解釈となるため、♭IIImaj7に進行しない『偽終止』と捉える方が、より自然な分析になるでしょう。
【Tip】ドミナント・レゾリューションを示す矢印がないことからも把握できますが、偽終止を表す( )の表記があることで、より詳細な解釈が可能になります。
まとめ
今回の記事では、♭VII7 が、IVm7とII-Vの関係になった場合のファンクションについて考察しました。
♭VII7 が、IVm7とII-Vの関係になると、ドミナント的な響きを強く感じるようになります。
このとき、主に以下の2つの捉え方が考えられます。
【1】♭VII7(ダイアトニック)として考える場合(デュアル・ファンクション)
- サブドミナント・マイナーの機能を持つ
- II-V進行を示す下カッコによって、ドミナント的な機能も持つ
【2】V7/♭III(セカンダリー・ドミナント)として考える場合
- II-V進行を示す下カッコからセカンダリー・ドミナント・ファンクション
という考え方になります。
ここで重要なのは、前回と同様に『II-V進行を示す下カッコの表記』です。
II-V進行があることで、
- II側には必ずリレイティドIIm7(またはリレイティドIIm7(♭5)
- V側にはドミナント
それぞれの機能が存在することが、分析上ひと目で理解できます。
このことは、実際の響きの感じ方にも大きく影響していると言えるでしょう。
理論の捉え方について、
まず、♭VII7 はダイアトニック・コードであり、基本的にサブドミナント・マイナーの機能であるということを理解しておくことが大切です。
その上で、コード進行の中でファンクションやディグリーネームをどう捉えるかは、それぞれの感性によってよいのではないでしょうか。
私は、♭VII7とダイアトニック優先で捉えることが多く、これはあくまで私自身の解釈として成り立っているものです。そのため、他の解釈を聞いて『そういう考えもあるんだ』などと感じることもよくあります。
最終的には、それぞれが独自で解釈し、理解していくことこそが、理論の面白さであり、作曲や演奏する時などに多いに役立つ知識だと感じています。理解が深まると。自然と『どれが正しいか』にこだわる必要がなくなってくるものです。
そして♭VII7も大詰めです!
次回は、『♭VII7のファンクションについて4』として、♭VII(トライアド)だとどうなるのか?について考察してみたいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
【筆者プロフィール】
- バークリー音楽大学 ジャズ・コンポジション科卒業
(同大学ハーモニー部門よりアレックス・ウラノウスキ・アワード受賞) - 国際ジャズ作曲コンペ優勝、音楽専門学校にて20年以上音楽理論教育に携わる
