ドミナント・マイナーの考え方|Vm7のファンクションについて2 

ドミナント・マイナーの考え方|Vm7のファンクションについて2 

こんにちは、枡田咲子です。

前回に引き続き、ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コード『Vm7』のファンクションについて考察していきます。

まず、コード・ファンクションを考える上で重要なのは、『そのコードが、コード進行の中でどのように機能しているか』という点です。つまり、同じコードであっても、コード進行によってファンクション(機能)が変わることがあるということです。

前回の記事で述べたとおり、Vm7の基本的なファンクションの考え方は、『V は I へ進行するもの』としてドミナントと捉えて問題ないと私は考えています。

しかし、音楽が多様化する時代においては、従来の枠組みだけでは説明しにくいコード進行や聴こえ方も増えてきています。そうした背景から『ドミナント・マイナー』という言葉が使われるのも一理あります。

そこで今回は、実例を通して『Vm7がドミナント・マイナー』として聴こえるであろう進行について考察してみたいと思います。

※本稿では、基本的なジャズ音楽理論やジャズ・ハーモニー(コード進行)を一通り学んだ方、またはジャズ音楽の教育に興味がある方向けの内容です。理論上の定義にこだわるというより、実際の楽曲でどう聴こえるか、どう使われているかをもとに考察しています。ご興味ある方はご一読ください。

マイナー・キーでのVm7

次のコード進行をみてみましょう。

コード進行例1:Vm7

このように、 Vm7が典型的な V - I (ドミナント・モーション)をしていないケースにおいても、調性感や進行上の役割としてドミナントと扱うことができますが、響きとしてはマイナー・サウンドが強く感じられます。

より細かく分析する視点として『ドミナント・マイナー』と言うこともでき、最もシンプルに説明することができるのだと思います。

しかし、このVm7もまた、別の視点から見ると V7(#9)の簡略形であり、またV7の偽終止を弱めた形として捉えることも可能です。

Vm7 はナチュラル・マイナーから構成されるダイアトニック・コードではありますが、マイナー・キーにおける本来のドミナントは、ハーモニック・マイナーまたはメロディック・マイナーを想定する方が自然だと考えることもできます。

コード進行例2:Vm7をV7(#9)に置き換える

以下の例では、上記【例1】のVm7をV7(#9)に置き換えた例です。

V7(#9)は、V7であることからドミナント・ファンクションであると考えらえます。

しかしV7(#9)の響きはやや複雑になりため、ジャンルの多様化からこの響きをよりシンプルにしたものが【例1】のVm7と捉えることはできないでしょうか。そのため、Vm7 をV7(#9) に置き換えても、ジャズ・ハーモニーとして大きな違和感は生じません。

つまりVm7とは、V7(#9)の第3音を省略し、マイナー・サウンドを強調したもので、もとはドミナント(V7)に由来するものとして理解することもできるのではないでしょうか。

これは個人的な見解ですが、

クラシック的な考え方を優先させるなら Vm7のファンクションはドミナント(V7(#9)が由来)

現代的により細かく分析する考え方を優先させるならVm7のファンクションはドミナント・マイナー

と捉えることができるでしょう。

実例:音を聴き比べてみよう

実際、【譜例1】と【譜例2】の音を聴き比べてみましょう。

理論的な違いというより、響きの違いや『どの響きが好きか』という視点で聴いていただければと思います。

動画には【譜例3】Vm7をV7(#9♭13)に置き換えたコード進行も紹介しています。

V7(#9)に♭13をさらに足すことで、よりマイナー・キーらしいジャズ・サウンドの響きになります。

V7(#9♭13)も、3つのマイナー・スケールから構成できる、ダイアトニック・コードと考えることができます。

まとめ

今回の記事では、Vm7のファンクション『ドミナント・マイナー』という考え方について整理してみました。

まず大前提として、

コード・ファンクションは、『そのコードがコード進行の中でどのように機能しているか』によって決まるものです。ときには、デュアル・ファンクションといって、2つの機能を併せ持つコードもあり、コード単体だけでファンクションを決めることはできません。

その上で、マイナー・キーにおけるVm7は、ルートにスケール上の第5音を持つことや、V7(#9)の変形としても用いることができる点から、基本的にはドミナント・ファンクションとして捉えて良いのではないかと、私は考えています。

一方で、実際のコード進行では、Vm7が必ずしもドミナントのように聴こえるとは限らず、Vであっても、強いマイナー的な特徴が全面に感じられる場合に『ドミナント・マイナー』という視点で捉えることで、より詳細な分析が可能になるとも思います。

音楽理論は、理解が深まるほど見解が多様になっていくものです。

経験を重ねる中で、正解を求めるのではなく、自分なりの考え方や捉え方を持てるようになることこそが、何より重要なのではないでしょうか。

次回は、メジャー・キーでのVm7についての考察していきます。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

【筆者プロフィール】

    • バークリー音楽大学 ジャズ・コンポジション科卒業
      (同大学ハーモニー部門よりアレックス・ウラノウスキ・アワード受賞)
    • 国際ジャズ作曲コンペ優勝、音楽専門学校にて20年以上音楽理論教育に携わる
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